LED・ランプ照明のリスクグループ

LED・ランプ照明の リスクグループ とは

LED・ランプ照明から放射される光の安全性の評価方法は IEC 62471 に規定されており、放射照度及び放射輝度の測定によって、放射光による生物学的傷害の度合いが評価されます。

この 生物学的傷害の度合いに応じた危険度の分類リスクグループ といいます。

留意事項

当ウェブサイトに記載の内容は、当方の規格解釈に基づくものであり、内容についての責任は一切負いません。また、簡略化のために詳細な条件については記載していない場合があります。実際の適用にあたっては、必ず原文を確認の上で適用してください。

リスクグループ に関する安全規格

LED・ランプ照明のリスクグループに関する安全規格は複数あります。製品の仕様によって適用すべき規格は変わりますが、ここでは主要な安全規格を紹介します。

IEC/EN 62471 関連の規格改正情報は、以下のページにまとめていますので、合わせて確認ください。

IEC/EN 62471 規格改正情報

コンテンツ1 IEC 62471 シリーズの改正状況2 EN 62471:2008 の概要3 IEC/EN 62471 関連規格 最新版 の購入 IEC 62471 シリーズの改正状況 IEC 62471:2006 IE […]

リスクグループ の定義

LED・ランプ照明のリスクグループは、傷害リスクの評価結果に応じて、以下の4段階のいずれかに分類されます。

リスクグループ生物学的傷害の度合い
免除グループ何らの光生物学的傷害も起こさないもの。
リスクグループ1(低危険度)通常の行動への制約が必要になるような傷害を引き起こさないもの。
リスクグループ2(中危険度)嫌悪感及び熱的な不快感を伴う傷害を引き起こさないもの。
リスクグループ3(高危険度)一時的又は短時間の露光によっても傷害を引き起こすもの。

なお、上記の説明は IEC 62471 (JIS C 7550) に基づくものであり、IEC 62471-5 など他の規格では異なる説明がなされる場合があります。

リスクグループの略称

リスクグループ1 ならば "RG1" のように、各リスクグループは省略して呼称される場合があります。また、免除グループの英語名称は "Exempt Group" ですが、IEC 62471-5 では "RG0" という略称が用いられています。

傷害リスクの種類 と リスクグループ の関係

LED・ランプ照明のリスクグループ分類をおこなうためには、以下の7種類の傷害リスクについて評価をおこなう必要があります。

傷害リスク記号測定量単位波長範囲 (nm)
目及び皮膚に対する紫外放射傷害ES放射照度W・m-2200 - 400
目に対する近紫外放射傷害EUVA放射照度W・m-2315 - 400
青色光による網膜傷害LB放射輝度W・m-2・sr-1300 - 700
小形光源の青色光による網膜傷害EB放射照度W・m-2300 - 700
網膜の熱傷害LR放射輝度W・m-2・sr-1380 - 1400
網膜の低可視光熱傷害LIR放射輝度W・m-2・sr-1780 - 1400
目の赤外放射傷害EIR放射照度W・m-2780 - 3000
光生物学的傷害リスクの種類

リスクグループは、7種類の傷害リスクについて測定した放射照度及び放射輝度の値が、下表の露光限界のしきい値を超えるかどうかによって分類します。

記号免除グループリスクグループ1リスクグループ2リスクグループ3
ES≤ 0.001≤ 0.003≤ 0.03> 0.03
EUVA≤ 10≤ 33≤ 100> 100
LB≤ 100≤ 10,000≤ 4,000,000> 4,000,000
EB≤ 1≤ 1
(免除グループと同じ)
≤ 400> 400
LR≤ 28,000/α≤ 28,000/α
(免除グループと同じ)
≤ 71,000/α> 71,000/α
LIR≤ 6,000/α≤ 6,000/α
(免除グループと同じ)
≤ 6,000/α
(免除グループと同じ)
> 6,000/α
EIR≤ 100≤ 570≤ 3,200> 3,200
露光限界とリスクグループの関係

※表中の "α" は、測定点から光源を見込む角度(視角)を表します。

これら 7種類の傷害リスクすべてについて 露光限界のしきい値を超えていない とき、そのリスクグループに割り当てられます。逆に1種類でも露光限界のしきい値を超えるものがあれば、より高いリスクグループに割り当てられることになります。

リスクグループ に応じた警告ラベル表示

IEC 62471 は LED・ランプ照明のリスクグループ分類について規定するのみであり、それぞれのリスクグループに分類された照明製品がどのような安全対策を講じるべきか、については触れていません。

一方で IEC TR 62471-2 は、製造者がユーザーに提供するべき安全情報の内容など、安全対策についても記述があります。ここでは、 IEC TR 62471-2 で推奨されている警告ラベルの内容について紹介します。

IEC TR 62471-2 のラベル要求事項

IEC TR 62471-2 では、製品に貼付するラベルに対して、以下が要求されています。

  • 表1にしたがって表示すること。
  • 免除グループ 及び 400-780 nm のみで発光するリスクグループ1 を除き、リスクグループを表示すること。
  • 製品の大きさや形状の理由によりラベル貼付が実用的でない場合は、ラベルを包装及びマニュアルに含めること。
  • 警告記号は、IEC 60417-1に準拠すること。
  • 筐体上のラベルは恒久的に取り付けられ、読みやすく、メンテナンス及びサービス中にはっきりと見えること。
  • 光放射に曝露せずに読み取れるように配置すること。
  • ラベルのテキスト及び境界線は、黄色の背景に黒で表示すること。
  • ラベルの大きさは、製品のサイズに合わせて調整すること。
  • ラベルの複製を文書へ含めること。
  • 複数の波長及びリスクグループに該当する場合は、すべての警告文を記載すること。
    ただし、リスクグループは最も高いリスクグループのみを表示する

IEC TR 62471-2 の警告ラベル例

リスクグループ3のラベル例

IEC TR 62471-2 のラベル要求事項に沿った警告ラベル例を上に示します。

しかし、規格中に示されているこのようなラベルのデザインは、一般的な警告ラベルのデザインとは構成要素や色などが異なる場合があります。自社製品で通常用いる警告ラベルに融和できるように、要求事項をうまく取り入れる必要があると思われます。

IEC TR 62471-2 の強制力について

この規格自体はガイダンスなので強制力を持つものではありません。

しかしながら、IEC 61010-1:2010+A1:2016ラベルに関する要求事項が引用されているため、この規格に該当する製品は、IEC TR 62471-2 のラベル要求にしたがう必要があります。また、IEC 62368-1:2018 では、IEC TR 62471-2 をもとにした指示セーフガードの要求があります。

傷害リスク 及び リスクグループ ごとの警告文例

以下に表1及び表2で挙げられている警告文を合わせたものを紹介します。

IEC TR 62471-2 で直接的に記載を要求されているのは表1の内容のみですが、警告ラベルの内容としてより適切にするためには、合わせて表2の内容も盛り込むべき と考えられます。

傷害リスク記号波長範囲 (nm)免除グループリスクグループ1
紫外傷害ES / EUVA200 - 400---NOTICE
UV emitted from this product.
Minimise exposure to eyes or skin.
Use appropriate shielding.
青色光による網膜傷害LB / EB300 - 700------
網膜の熱的傷害
LR380 - 1400------
角膜 / 水晶体の赤外放射傷害EIR780 - 3000---NOTICE
IR emitted from this product.
Use appropriate shielding or eye protection.
網膜の低可視光熱傷害LIR780 - 1400---WARNING
IR emitted from this product.
Do not stare at operating lamp.
免除グループ / リスクグループ1の警告ラベル文例
傷害リスク記号波長範囲 (nm)リスクグループ2リスクグループ3
紫外傷害ES / EUVA200 - 400CAUTION
UV emitted from this product.
Eye or skin irritation may result from exposure.
Use appropriate shielding.
WARNING
UV emitted from this product.
Avoid eye and skin exposure to unshielded product.
青色光による網膜傷害LB / EB300 - 700CAUTION
Possibly hazardous optical radiation emitted from this product.
Do not stare at operating lamp. May be harmful to the eyes.
WARNING
Possibly hazardous optical radiation emitted from this product.
Do not look at operating lamp. Eye injury may result.
網膜の熱的傷害LR380 - 1400CAUTION
Possibly hazardous optical radiation emitted from this product.
Do not stare at operating lamp. May be harmful to the eyes.
WARNING
Possibly hazardous optical radiation emitted from this product.
Do not look at operating lamp. Eye injury may result.
角膜 / 水晶体の赤外放射傷害EIR780 - 3000CAUTION
IR emitted from this product.
Avoid eye exposure.
Use appropriate shielding or eye protection.
WARNING
IR emitted from this product.
Avoid eye exposure.
Use appropriate shielding or eye protection.
網膜の低可視光熱傷害LIR780 - 1400WARNING
IR emitted from this product.
Do not stare at operating lamp.
WARNING
IR emitted from this product.
Do not look at operating lamp.
リスクグループ2 /3の警告ラベル文例

リスクグループ1 のシグナルワード "NOTICE" について

IEC TR 62471-2 の表1では、リスクグループ1のシグナルワードとして "NOTICE" が挙げられていますが、人の傷害に関わる警告表示に "NOTICE"(注記)を用いるのは通常適切ではないと考えられます。

他の安全規格との整合性を考慮すると、上表において "NOTICE" となっている傷害リスクのシグナルワードは、"CAUTION" に置き換えるのが適切でしょう。

リスクグループと警告文例の対応関係

残念ながら、リスクグループの分類の際に評価をおこなった7種類の傷害リスク (IEC 62471) と、5種類の警告文例 (IEC TR 62471-2) は一対一に対応していません。

これでは実務上どうすればいいのか困ってしまいますので、本ページでは、IEC 62368-1:2018 の規定も参考にして、IEC 62471 の傷害リスクとの対応関係を整理したものを掲載しています。したがって、上記の警告ラベル文例表は IEC TR 62471-2 に記載の表とは内容に異なる点があることにご注意ください。