PSCマーク と 携帯用レーザー応用装置 の解説

PSCマーク制度 と 携帯用レーザー応用装置

このページでは、 消費生活用製品安全法に基づく PSCマーク制度 のポイントをできる限りわかりやすく解説しています。特に「携帯用レーザー応用装置」に焦点を当てていますので、これから PSCマーク に対応される方は参考にしてください。

留意事項

当ウェブサイトに記載の内容は、当方の法令解釈に基づくものであり、内容についての責任は一切負いません。また、簡略化のために詳細な条件については記載していない場合があります。実際の適用にあたっては、必ず原文を確認の上で適用してください。

PSCマーク制度の概要

消費生活用製品安全法 (PSCマーク制度) とは

消費生活用製品安全法 (PSCマーク制度) は、消費者が日常使用する製品 (消費生活用製品) により起こりうるケガなどの人身事故の発生を未然に防ぎ、消費者の安全と利益を保護することを目的として制定された法律・制度です。

PSCマーク と 特定製品・特別特定製品

「消費生活用製品」のうち、構造や使用状況などから特に一般消費者に危害を及ぼすおそれが多いと考えられるものが、特定製品と定められており、 PSCマーク が付されたものでなければ販売することができません

さらに、「特定製品」のうち、事業者の中に安全性の確保が不十分な者がいると認められる製品は、特別特定製品として指定されており、他の特定製品よりも一段厳しく規制されています。レーザーポインター や レーザー距離計 などの「携帯用レーザー応用装置」は、特別特定製品に指定されています

PSCマーク の対象製品

PSCマーク の対象となる製品は、下表の通りです。
特別特定製品は、菱形の PSCマーク 、それ以外の特定製品は、丸囲みの PSCマーク を表示しなければなりません。

PSCマーク 対象の特定製品一覧

特別特定製品乳幼児用ベッド
携帯用レーザー応用装置
浴槽用温水循環器
ライター
消費生活用製品安全法 特別特定製品 PSCマーク
特別特定製品以外の特定製品家庭用の圧力なべ及び圧力がま
乗車用ヘルメット
登山用ロープ
石油給湯器
石油ふろがま
石油ストーブ
消費生活用製品安全法 特定製品 PSCマーク

携帯用レーザー応用装置 とは

携帯用レーザー応用装置 の定義

菱形PSCマーク(特別特定製品)の対象である、携帯用レーザー応用装置の定義は、「レーザー光(可視光線に限る)を外部に照射して文字又は図形を表示することを目的として設計したものであって、携帯用のもの」とされています。

詳細な用語の解釈について

「携帯用」とは、容易に持ち運びできるものを指します。建物のコンセントに接続したり、建物や他の機械器具等に据え付けて使用するものは「携帯用」に該当しません。

「可視光線」とは、約 400 - 700 nm の波長範囲をいいます。

「図形」には点が含まれ、映像を表示する製品も対象になります。

携帯用レーザー応用装置 の例

携帯用レーザー応用装置 には、以下のような製品が含まれるとされています。

  • レーザーポインター
  • レーザー照準器
  • レーザー距離計
  • レーザー光を放出するおもちゃ
  • レーザー猫じゃらし
  • レーザー付き放射温度計
  • レーザー付きジグソー
  • レーザー付きモデルガン
  • レーザーを利用した網膜走査型ディスプレイ

事業用の「携帯用レーザー応用装置」は規制対象か

製品自体が一般消費者による使用を意図していなかったとしても、容易に一般消費者が購入できる状態(ECサイトやホームセンター等に陳列されている等)にあるものは、規制の対象となるおそれがありますので、注意が必要です。

事業用途に使用することを目的に設計・製造された製品であっても、「主として一般消費者の生活の用に供される製品」に該当する場合は、 PSCマーク の対象となります。

「主として一般消費者の生活の用に供される」とは

事業者がその事業をおこなう際に使用するケース以外は、すべて「主として一般消費者の生活の用に供される」に該当するとされています。よって、一般家庭での使用が見込まれるような汎用性がある製品や、一般家庭で使用されることを前提とした販売・陳列・広報がされているものは、 PSCマーク の対象と考えられます。

したがって、一般消費者が容易に購入可能な EC サイトやホームセンターに陳列したり、 DIY 用途と表示して販売をする場合は、 PSCマーク に対応する必要があるでしょう。

消費生活用製品安全法 (PSCマーク) に違反した場合の罰則

罰則① (販売の制限)

携帯用レーザー応用装置 を含む、特定製品の「製造」「輸入」または「販売」の事業をおこなう者は、法令で要求される義務をすべて履行した上で、適切に PSCマーク を表示したものでなければ、特定製品を販売し、または販売の目的で陳列してはならない、とされています。(消費生活用製品安全法 第4条)

上記の販売の制限(法 第4条)に違反した者は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処されることとされています。また、懲役と罰金が併科される可能性もあります。(消費生活用製品安全法 第58条第1項)

罰則② (表示の制限)

法上の義務をすべて履行した場合でなければ、製品に PSCマーク や、これと紛らわしいマークを表示することはできません。(法 第5条)
これに違反した場合も、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処され、併科される可能性があります。

その他の罰金刑

その他、携帯用レーザー応用装置に関連するものとして、 以下のケースは、30万円以下の罰金に処される可能性があります。

  • 虚偽の事業届出(法 第59条第1項)
  • 検査の不実施、検査記録の未作成・未保存、虚偽の検査記録作成(法 第59条第2項)
  • 登録検査機関による適合性検査の証明書未受領・未保存(法 第59条第3項)

携帯用レーザー応用装置 製造者 / 輸入事業者の義務

携帯用レーザー応用装置 を製造し、または、輸入する事業をおこなう場合、以下の義務が発生します。

  • 事業の届出(法 第6条)
  • 技術基準への適合(法 第11条第1項)
  • 特定製品の検査、検査記録の保管および保存(法 第11条第2項)
  • 損害賠償責任保険の契約(法 第11条第3項 / 技術基準省令 第16条)
  • 登録検査機関による適合性検査、証明書の交付および保存(法 第12条)
  • PSCマーク 等の表示(法 第13条)

携帯用レーザー応用装置 (PSCマーク) の技術基準

適合すべき具体的な技術基準は、いわゆる技術基準省令の別表第1にまとめられています。携帯用レーザー応用装置に対する要求事項は、大きく分けて以下の4点です。

  1. 適切なレーザクラスのレーザ製品であること。
  2. 出力安定化回路を有すること。
  3. 放出状態維持機能を有さないこと。
  4. 届出事業者および登録検査機関の名称を表示し、使用上の注意事項が表示されていること。

技術基準についての注意事項

これらには、JIS C 6802 (IEC 60825-1) とは異なる、消安法独自の要求事項が含まれていますので注意が必要です。特に海外製のレーザー製品を輸入される場合は、きちんと設計を確認しないと不適合になるおそれがあります。

レーザクラスの要求事項

レーザー光が放出状態にあることを確認できる機能(LEDのモニターランプなど)を有する製品は、原則として JIS C 6802: 2014 に規定されるクラス1レーザ製品またはクラス2レーザ製品であることが要求されています。

放出状態の確認機能が無い製品については、クラス1レーザ製品(時間基準 30,000 秒)に該当する必要があります。これは、通常のレーザクラス1の基準よりも厳しいものになっています。

クラス1Mレーザ製品の取り扱い

製品がクラス1Mレーザ製品に該当する場合であっても、クラス2の AEL を超えない場合は、クラス2レーザ製品と扱ってよいとされています。

表示に関する要求事項

PSCマーク の他、以下を容易に消えない方法で表示する必要があります。

  • 届出事業者の氏名または名称
  • 登録検査機関の氏名または名称
  • 安全に使用するうえで必要となる使用上の注意事項
    • レーザー光をのぞきこまないこと
    • レーザー光を人に向けないこと
    • 子どもに使用させないこと

略称・登録商標の使用

届出事業者や登録検査機関の氏名・名称については、届出をおこなって経済産業大臣の承認を受けることで、略称や登録商標を代わりに表示することができます。

登録検査機関による PSCマーク 適合性検査

携帯用レーザー応用装置 の登録検査機関

法定の適合性検査を実施できるのは、登録検査機関に限られます。 携帯用レーザー応用装置 については、以下の2社が登録されていますので、PSCマーク への対応に当たっては、必ずいずれかによる検査を受ける必要があります。

適合性検査の方式

PSCマークの適合性検査の方式には、以下の2つがあります。

方式概要主な適用ケース
1号検査
(ロット検査方式)
製品(特定機種)が基準を満たすか検査
・ロットごとに決められた数量を抜き取り
・検査を受けた特定機種に対して証明書を交付
ロットごとに新たに受検が必要
輸入品
2号検査
(型式検査方式)
製品(型式)が基準を満たすか検査
・サンプルに対する検査に加えて、工場検査を実施
・型式区分、工場、検査設備等に対して証明書を交付
3年ごとに再受検して更新が必要
国内製造の製品

国内製造、海外製造に関わらず、いずれの検査方式も選択することが可能です。それぞれにメリット、デメリットがありますので、どちらのほうが都合が良いか検討して決定することになります。

2号検査の注意事項

2号検査は、検査官が工場に行くことができないと原則として実施できません。したがって、海外に製造工場がある場合は、渡航制限の無い状況でないと2号検査の選択は難しいでしょう。

1号検査 (ロット検査方式)

製品が技術基準を満足しているかどうか、実際に抜き取り検査をおこなって確認する方式です。 PSCマーク を貼付するすべてのロットに対して実施する必要があり、また、機種ごとに検査を受ける必要があるので、ランニングコストが大きくなりがちです。

被検査体の抜き取り数量は、以下の通りです。

ロット数量抜き取り数量
1 ~ 502
51 ~ 5003
501 ~ 35,0005
35,001 ~8

2号検査 (型式検査方式)

製品の技術基準適合性を確認する、というのは1号検査と共通ですが、検査を受けた機種そのものに証明書が交付されるのではなく、その機種の属する「型式の区分」、「工場」、「検査設備」などに対して証明書が交付される、という点が特徴です。例えば、新しい機種を開発した場合でも、旧モデルと同じ型式区分に属するもので、工場や検査設備などが共通であれば、新しい機種について検査を受けなおす必要はありません。

これは、工場検査による品質管理の確認を通して、試験用サンプルと同等のものが安定供給できるかどうかを確認しているためです。

工場における試験設備や品質管理事項に対する要求に対応する必要が出てきますが、多くの機種を大量に製造されている場合には、対応費用や手間の面で、1号検査に対してメリットが大きくなります。

2号検査 試験設備の要求事項

携帯用レーザー応用装置 の試験設備に対しては、以下が要求されます。適切に校正された状態を維持するようにしましょう。

試験設備要求事項
電圧試験設備
(電圧計など)
測定精度 1 mV 以上で、10 V まで測定できるもの
波長試験設備
(波長計、分光計など)
測定精度 1 nm 以上で、400 ~ 700 nm が測定できるもの
光パワー試験設備
(光パワーメータなど)
・400 ~ 700 nm が測定できるもの
・測定精度 10 nW 以上で、10 mW まで測定できるもの
・パルスの場合は、パルス周波数相当の感度があるもの

2号検査 品質管理の要求事項

工場における品質管理については、以下の要求事項があります。一般的に製造工場の品質管理として要求される事項ばかりですので、ISO 9001 の認証を受けているような工場であれば、大きな課題は無いでしょう。

  • 製品検査
  • 検査設備管理
  • 資材の受入れと製造管理
  • 製造設備管理
  • 組織および責任と権限

携帯用レーザー応用装置 (PSCマーク) の自主検査

携帯用レーザー応用装置に対する自主検査の実施

届出事業者は、製品が技術基準に適合していることを確認するために、自主検査を実施することが求められています。自主検査で実施すべき検査の内容は指定されていませんが、2号検査の試験設備に対する要求を考慮すると、少なくとも波長および光パワーの検査と外観検査をおこなうことは必須と考えられます。製品の設計に応じて必要十分な検査内容を検討してください。

検査記録の作成と保存

届出事業者には、自主検査をおこなった記録を作成し、保存する義務があります。検査記録には、以下の項目を含めなければなりません。

  • 特定製品の区分、構造、材質、性能の概要
  • 検査の年月日、場所
  • 検査実施者の氏名
  • 検査した製品の数量
  • 検査の方法
  • 検査の結果

また、保存しなければならない期間は、検査をおこなった日から3年間です。

PSCマーク と 携帯用レーザー応用装置 の参考情報

外部リンク

消費生活用製品安全法(経済産業省)経済産業省の消安法ウェブサイトです。
法令の原文や、申請書類の様式、法令業務実施ガイドなど、実務に必要な情報にアクセスできます。
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JIS C 6802 「レーザ製品の安全基準」も閲覧することができます。