IEC/EN 61010-1 規格改正情報

IEC 61010-1/AMD2 ED3 (第3.2版)

IEC TC66 委員会では、IEC 61010-1 の次の版として、IEC 61010-1/AMD2 ED3 (第3.2版) の策定が進められています。

2024年2月時点で、発行見込は 2025年5月 の予定となっています。新しい情報があり次第、このページでお知らせしていきます。

IEC 61010-1:2010/AMD1:2016 (第3.1版) 発行

2016年12月16日に IEC 61010-1 の最新版として、IEC 61010-1:2010/AMD1:2016 (第3.1版 / Edition 3.1) が発行されました。

改正された部分は、英語で約25ページ程度の内容となっており、自社製品に関連する箇所だけに絞ればすぐに確認できるボリュームです。

IEC 61010-1 に対応する JIS 規格は、 JIS C 1010-1 (測定用, 制御用及び試験室用電気機器の安全性 − 第1部:一般要求事項) になります。2019年に発行された JIS C 1010-1:2019 が、IEC 61010-1:2010/AMD1:2016 に対応した内容となっていますので、日本語で内容を確認したい方は JIS を参考にするのも良いかもしれません。

修正 (AMD) 形式での発行について

修正 (AMD, Amendment) の形式で発行されている規格ですので、 IEC 61010-1:2010/AMD1:2016 を読んで把握できるのは、 IEC 61010-1:2010 に対する変更内容のみです。規格の全体を理解するためには、IEC 61010-1:2010 と合わせて確認する必要があります。

IEC 61010-1:2010/AMD1:2016 (第3.1版) での変更内容

全体として、 IEC 61010-1:2010/AMD1:2016 で変更された内容は軽微です。すでに IEC 61010-1:2010 に適合している製品であれば、再試験が必要になるものは少ないと思われます。また、テストレポートについてもあまり手間をかけずに更新できるのではないかと思われます。

EN 61010-1:2010/A1:2019 への更新にあたっては、ここに挙げている変更点に加えて、後述の EN 規格と IEC 規格の差分も合わせて確認してください。

注意事項

規格の更新対応の際は、必ず規格原文を確認してください。楽をするために規格原文を読まず、どこかのウェブサイト(本ページも含む)に掲載してあった情報を鵜呑みにした結果、対応に抜け漏れがあっては目も当てられません。対応に不安がある場合は、専門家に相談しましょう。

なお、当ページに記載の内容は、当方の規格解釈に基づくものであり、内容についての責任は一切負いませんので、ご了承ください。

IEC 61010-1:2010/AMD1:2016 の主な変更点

主要な変更点は以下の通りです。

  • 試験 / 一般 (4.1)
    リスクアセスメントを裏付けるために必要な試験の条件について明記された。
     
  • 単一故障状態における試験 / 一般 (4.4.1)
    標準試験状態の環境条件で、単一故障状態の現実的な評価ができない場合、最も不利な定格環境条件で試験をおこなうことが追記された。
     
  • 主電源 (5.1.3)
    入力電流が通常の動作サイクル中に変化する場合の定常電流の決め方が追加された。
     
  • 警告表示 (5.2)
    この箇条にしたがうべき警告が、限定列挙からこの規格に規定するすべての警告に変更された。
     
  • 機器の定格 (5.4.2)
    文書に記載すべき環境条件範囲が明確化された。従来の文書(取扱説明書など)に以下の8項目が記載できていない場合は、追記が必要。
    • 屋内使用 / 屋外使用
    • 高度
    • 周囲温度
    • 相対湿度
    • 主電源電圧変動
    • 過電圧カテゴリ(コード/プラグ接続機器を除く)
    • 湿った場所(該当する場合)
    • 意図する周囲環境の汚染度
       
  • 正常状態 / 単一故障状態におけるレベル (6.3.1 / 6.3.2)
    危険な活電とみなす電圧レベル限度値が変更された。機器の接触可能な部分に、変更前後の限度値の間の電圧が生じる場合は、危険な活電に該当するのか再確認が必要。
    • 正常状態:AC 33 Vrms / Peak 46.7 V / DC 70 V → AC 30 Vrms / Peak 42.4 V / DC 60 V
    • 単一故障状態:AC 55 Vrms / Peak 78 V / DC 140 V → AC 50 Vrms / Peak 70 V / DC 120 V
       
  • 沿面距離 (6.7.1.3)
    異なるCTI値の材料や汚染度が存在する場合の解釈が明確化された。
    沿面距離を構成する一つの部分が、全体の電圧に耐えられる寸法であれば問題なし。
    そうでない場合は、最も厳しい汚染度で、最低のCTI値の材料に対する寸法が要求される。
    例えば、基板の絶縁上にコネクタ部品の角が重なっていたりすると、沿面距離が不足する可能性があり、注意が必要。
     
  • 固体絶縁 (6.7.2.2)
    交流電圧試験に加えて、直流電圧試験も選択できるようになった。
     
  • 電圧試験の手順 / 一般 (6.8.1)
    空間距離の検証で電圧試験を実施する際、絶縁と並列になっているインピーダンス等を取り外してもよいことが明記された。
     
  • 交流電圧試験 (6.8.3.1)
    電圧試験器に対する電流・電力供給能力の要件が削除された。
     
  • 力及び圧力の制限 (7.3.4)
    フォースゲージに対する要件が削除された。また、接触面積の計算方法が明確化された。
     
  • 安定性 (7.4)
    キャスタ / 支持用脚に対する要求が緩和された。
     
  • 過電流保護 / 一般 (9.6.1)
    主電源の個体絶縁に対する電圧試験は、交流電圧試験だけでなく直流電圧試験でもよいこととなった。
     
  • 温度試験 (10.4.1)
    最も不利な定格内周囲温度で試験を実施する規定が追加された。
    例えば、全体の発熱量のうち集積回路による発熱の割合が大きく、周囲温度が高いほど機器の発熱も大きくなるような機器であれば、最大定格周囲温度で試験をおこなわなければならない。
    また、恒温槽の空気循環による機器の冷却効果など、誤差の要因を排除する手段を講じることが明記された。
     
  • 保護等級 (IPコード) をもつ機器 (11.6)
    機器が保護等級(IPコード)をもつ場合の試験条件などが明確化された。
     
  • 高圧力での漏れ及び破裂 (11.7.2)
    水圧試験における試験圧力などが変更された。
     
  • 光学放射 (12.3)
    紫外線だけでなく、可視光や赤外線を放射する機器も本箇条の対象になった。
    • 適合性の判断は、従来リスクアセスメント文書の評価による確認だったが、光源が安全とみなされるものでない限りは、光学放射の測定(IEC 62471 に基づくリスクグループの分類)が必要となった。
      • 表22に挙げられているランプ/ランプシステム(LEDインジケータ、LCDなど)は、光生物学的に安全とみなされる。
      • 表23に挙げられているランプ/ランプシステム(蛍光管など)は、表23の使用条件のもとでは光生物学的に安全とみなされる。
    • さらに、リスクグループに応じて、IEC TR 62471-2 に従ったラベル表示が必要。(詳しくは、照明リスクグループの解説ページを参照。)機器上への表示が困難な場合は、Symbol 14 (△の中に!) を代わりに表示して、関連情報を文書へ記載してもよい。
      • 免除グループ 及び 400-780 nm のみで発光するリスクグループ1 に対しては、ラベル要求は無い。
      • リスクグループを表示すること。
      • 光放射に曝露せずに読み取れるように配置すること。
      • ラベルのテキスト及び境界線は、黄色の背景に黒で表示すること。
      • ラベルの複製を文書へ含めること。
      • ラベルの例は、図2を参照する。
        • テキストは、波長及びリスクグループに応じて、表1及び表2の文言を参考に記載する。
        • 複数の波長及びリスクグループに該当する場合は、すべての警告文を記載する。ただし、リスクグループは最も高いリスクグループを表示する。
    • また、表22に該当しない場合は、必要な保護手段、使用制限や操作説明に関する情報を提供しなければならない。(表23に該当する場合は、使用条件の情報も含む)
        
LED・ランプ照明のリスクグループ

コンテンツ1 LED・ランプ照明の リスクグループ とは2 リスクグループ に関する安全規格3 リスクグループ の定義4 傷害リスクの種類 と リスクグループ の関係5 リスクグ…

  • 有毒及び有害なガス及び物質 (13.1)
    正常状態だけでなく、単一故障状態においても危険な量の危険物質を発散してはならない、と変更された。
     
  • 過渡過電圧を制限するために用いる回路 (14.8)
    適合性評価の内容が変更された。過電圧制限回路は、試験後も正常に機能し続けなければならない。
     
  • 汚染に対する保護のための絶縁保護コーティングの必要条件 (附属書H)
    耐ひっかき性の試験が削除された。急速温度変化の処理サイクル数が 5 回→ 50 回に増加した。
     
  • 一般的な低電圧主電源供給システムでのライン対中性点間電圧 (附属書I)
    三相4線式システム 中性点非接地 (ITシステム) が追加された。
     
  • 主電源回路に対する空間距離及び沿面距離 (K.1.2)
    適合性の確認において、疑義がある場合は電圧試験によって確認することが追記された。

EN 61010-1:2010/A1:2019 への切替対応期限

EN 61010-1:2010 は取り下げられましたので、CEマーキングへの適合を維持するためには、 2022年5月30日以降は EN 61010-1:2010/A1:2019 への切替が完了している必要があります。

低電圧指令 (LVD) や 無線機器指令 (RED) の整合規格として EN 61010-1:2010 を採用している場合は、早目の対応を検討してください。

EN 61010-1:2010/A1:2019 と IEC 規格の差分

EN 61010-1:2010/A1:2019 と IEC 61010-1:2010/AMD1:2016 の間に技術的差異はほとんどありません

  • 交流電圧試験 (6.8.3.1)
    電圧試験器は、試験中、指定値の+/-5%以内の出力を維持できること

IEC 61010-1 最新版 (第3.1版) の購入

ご自身で規格を購入される方は、以下の IEC Webstore (外部リンク)から購入することが可能です。

IEC 61010-1:2010 本体と合わせて確認されたい方は、CSV (Consolidated version) をご購入ください。