低電圧指令 (LVD) の適用範囲

低電圧指令 (LVD) の適用範囲

本ページでは、低電圧指令の適用範囲および対象製品について解説します。低電圧指令の要求事項については、以下の別記事で紹介していますので、本ページの内容と合わせてご確認ください。

低電圧指令 (LVD) の要求事項

コンテンツ1 低電圧指令 (LVD) 2014/35/EU2 低電圧指令 (LVD) の目的3 低電圧指令 (LVD) の要求事項4 低電圧指令 (LVD) における各事業者の義務5 低電圧指令 (LVD) の参考…

低電圧指令 の対象となる電圧範囲

低電圧指令は、以下の定格電圧内で使用するように設計されたすべての電気機器に適用されます。(低電圧指令 第1条)

  • AC (交流) 50 ~ 1000 V
  • DC (直流) 75 ~ 1500 V

ここでいう定格電圧」とは、入力電圧および出力電圧を指します。入力定格と出力定格の少なくとも一方が、上記の電圧範囲に含まれるのであれば、低電圧指令を適用しなければなりません。

また、定格電圧が複数、または範囲に幅がある機器の場合、最高電圧が上記の範囲に含まれれば対象と考えられます。逆に最高電圧が AC 1000 V / DC 1500 V を超える機器は対象ではありません。

機器内部に高電圧が存在する機器

入出力定格が AC 50 V / DC 75 V 未満であれば、機器の内部に高電圧回路が存在する場合であっても、当該機器は低電圧指令の対象外となります。

しかしながら、高電圧回路を有する機器は、感電をはじめとした各種ハザードをもたらす危険性が大きくなりますので、低電圧指令の対象ではなくても、整合規格と同等以上の安全設計をおこなうことをお勧めします。

DC24V 機器 / 電池 (バッテリ) 駆動機器

入力定格電圧が DC24V の機器や、電池で駆動する機器は、出力定格電圧も範囲外なのであれば、低電圧指令の対象ではない、といえます。

ただし、その機器の仕様や接続する機器の構成によっては、スコープに含まれると考えたほうが良い場合もあり得るでしょう。

低電圧指令 (LVD) の対象製品

低電圧指令 対象製品 の例

低電圧指令は、以下のような幅広い電気機器に適用されます。適用に当たって、消費者向けか、プロフェッショナル向けか、という点は関係がありません。なお、これらは例であるため、適用範囲はこれらに限られません。

  • 電気機器(家庭用・消費者向けに限らない)
  • ケーブル
  • 電源ユニット(ACアダプタやスイッチング電源など)
  • レーザー機器
  • バラストを含む照明機器
  • 特定のコンポーネント
    • ヒューズ
    • 開閉器、制御器
    • 変圧器、トランス
    • モーター
    • オルタネーター
    • 機器用カプラ
    • 電源コードセット

適用除外機器

低電圧指令の附属書 II には、指令でカバーされない機器および現象がリストされています。これらは、より特定された EU 法令でカバーされる等の理由により、低電圧指令の対象外とされています。

  • 爆発性雰囲気で使用される機器(ATEX指令)
  • 放射線機器、医療機器(医療機器規則)
  • リフト用の部品(リフト指令)
  • 電気メーター(計量器指令)
  • 家庭用のプラグ、ソケット(各国の規制に従う)
    ※機器側のカプラや、工業用の特殊なプラグ等は除外されない。
  • 電気フェンス用コントローラー
  • 無線、電気的な干渉(RE指令、EMC指令)
  • 特定の基準に適合した船舶、航空機、鉄道用の機器
  • 研究開発施設で使用されるカスタムメイドの評価用キット

プラグやソケットの適用範囲

低電圧指令のガイドライン 附属書 VII には、製品が適用範囲に含まれるかどうかが写真付きで例示されています。特にプラグやソケット、コードセット、電源プラグアダプタなどの例が豊富なため、プラグ・ソケット類の判断に困る場合は参考になります。

コンポーネント (部品) の扱い

コンポーネント (部品) が低電圧指令の対象となるかどうかは、そのコンポーネント単体で安全性の評価(リスクアセスメント)が実施できるかどうか、で判断することができます。

その安全性が、最終製品への組み込み方法や、最終製品の特性に強く依存しており、単体での評価が困難な場合は、低電圧指令の対象とはなりません。低電圧指令のガイドラインでは、以下のような部品がその例として挙げられています。

  • 能動コンポーネント(集積回路、トランジスタ、ダイオード等)
  • 受動コンポーネント(コンデンサ、インダクタ、抵抗等)
  • 電気機械コンポーネント(コネクタ、リレー等)

一方で、トランスや電気モーターのように、他の機器に組み込まれることが意図されているものの、単体でリスクアセスメントが実施可能と考えられるコンポーネントについては、低電圧指令でカバーされます。

低電圧指令 と 機械規則 の関係

低電圧指令と機械規則は排他的関係にあるため、同一の製品に対して、低電圧指令と機械規則の両方を同時に適用することはできません

低電圧指令のカバーする電圧範囲の定格をもつ機器であっても、それが機械規則のスコープに含まれるもの(機械、半完成機械や安全コンポーネント等)であれば、機械規則を適用します。

一方で、以下の機器については、機械規則が適用されないことが明示されていますので、低電圧指令を適用します。

  • 家庭用を意図した電気製品であって、電動家具ではないもの
    ※ただし電動工具、造園用電気機械は除く。
  • オーディオ / ビデオ機器
  • 情報技術機器
  • 一般事務用機器(3Dプリンターを除く)
  • 低電圧開閉器、制御器
  • 電気モーター

低電圧指令か、機械規則か

機械規則における機械 (machinery) の定義には抽象的な表現が多く含まれているため、機器が「機械」に該当するのかどうかを判断するのが難しいことがあります。

低電圧指令および機械規則のスコープを正しく理解してなお、メーカー自身が判断に迷うということは、その機器は両指令の境界に位置する機器である、ということです。このような場合、「どちらが正解か」という議論はもはやあまり意味がありません。重要なのは、なぜその指令を適用しているのかを理論立てて説明できることです。

低電圧指令 と RE指令 の関係

低電圧指令とRE指令もまた排他的関係にあるため、同一の製品に対して、低電圧指令とRE指令を同時に適用してはいけません。(機械規則とRE指令は排他関係にないので、これらは同時適用可能。)

RE指令の適用範囲に含まれるかどうかを判断することは容易な場合が多いため、低電圧指令かRE指令かで迷うことは少ないでしょう。

RE指令の安全必須要求

注意が必要なのは、RE指令は低電圧指令の必須要求事項を参照しており、これに関して電圧範囲の制限は適用されない、という点です。

つまり、定格電圧が低電圧指令のスコープ外であったとしても、RE指令を適用する無線機器であれば、低電圧指令と同様の安全要求が課されます。その場合は、低電圧指令の整合規格から、適切なものを選択して適用することを検討してください。

低電圧指令 (LVD) に関する参考情報

外部リンク

低電圧指令 (LVD) 2014/35/EU低電圧指令 (LVD) 2014/35/EU の原文を確認できます。
Low Voltage Directive (LVD)EU総局のウェブサイトです。
低電圧指令のガイダンスなど、関連情報がまとまっています。